深い深い森の中 [手紙]
山田詠美の本に、思い出はアメ玉なんだって書いてあった。
思い出のアメ玉は、甘くて美味しい。アメ玉は舐めると段々小さくなっていく。
そうやって、思い出は薄れていく…。って私は本を読んだ時、納得してた。
そう、私もシュウジのこと、少し薄れていってる。ごめんね、それは本当の事。
もう、アメ玉が小さくなってきているんだ。
亡くなったって聞いてから、人なんて好きになるもんじゃないと思ってた。
みんな、いつかはいなくなる。
でも、人を好きになった。
人を好きになること＝あなたを忘れること＝この世からあなたの存在がなかった事になる
って思ってた。本気で思ってた。
そして、私が好きだったことが、全部ウソだってあなたに思われるのではないかと恐れた。
あなたは、私の気持なんて知ってたか、知らないけど。
今でも、人を好きになるのは、裏切る様な気がしてならないんだ。
難しいね。
アメ玉も、もう小さくなってきている。私は思い出の中にも、居場所がなくなってきてる。
でも、あなたの所にはまだ行かれないから。ごめんね。
